三親牧場「2007年春の山菜採り」2007年05月18-20日 (写真集

 深夜の山フンベの牧場を初めて訪ねてから8年目をむかえる。広尾の街を通り過ぎて真暗闇の山道を走り、牧場の灯りが見えてきた時に、ほっとしたのを今もはっきりと思い出す。旭川を出発してから約5時間、とっぷりと日が暮れた十勝平野を走りぬけて、太平洋の潮の香りがただよう広尾に着いたのは、深夜11時頃だった。
 国道から広尾川沿いに山フンベに向かう道路は、途中から森に包まれた狭い砂利道となり、そこは暗黒の世界の入口のようでもあり、わずかな距離だが非常に長く感じられた。春と秋にお邪魔すること十数回、今は走りなれた道だが、それでも夜は走りたくない。最近は大雪山の北東の空が薄明るくなった早朝に家を出るので、上川の街を過ぎる頃には日の出をむかえ、三国峠越えも安心だ。

 天気予報では、予定の3日間は雨模様で、帯広へ着く頃には雨脚も強くなってきた。予定より早く帯広空港に着いたので、車の中で仮眠をとったが、気温も低いようで、時々エンジンを回してヒーターを入れる。


 白樺並木(三親牧場 Photo/2007.05.18)

 幾度となく見慣れた白樺並木だが、少し大きくなったように思う。今年は春が早かったので牧草は青々としているが、日高山麓の春は遅々として、小雨の中で白樺の幹が寒々としている。長年手を惜しまず大切に作り上げた牧草地には、谷地坊主のように取り残された雑草はない。蹄耕法を実践する牧場経営と自然に配慮した環境作りで、牧場周辺や放牧地に大きな木がたくさん残されている。
 広い牧場のことを一番良く知っているのは、たぶん愛犬シロだ。見知らぬ旅のものが牧場の中を散歩する時も、必ず付いてきて監視を怠らない。時々小高い場所から遠くを眺め、家人の姿が見えると、一目散に駆け寄ってなにやら報告をしているようだ。

 昨日からの雨があがり明るい空が広がって、3日ぶりに山フンベの谷に、陽射しが蘇った。まだ雪融け水で増水している渓に釣りに入る。今回は久しぶりに日高山麓の春を探すために竿を持ってこなかった。白い飛沫を上げて流れる渓に銀鱗が躍るのを見ていると口惜しい気もするが、オオサクラソウやミヤマスミレなどが迎えてくれる渓は更に魅力がある。
 入渓した広場で昼食をして、一足先に日高山麓を後にする。帰りの川沿いの林道から振り返えると、雪渓を頂いた広尾岳が神々しくそびえていた。


 放牧地(三親牧場 Photo/2007.05.18)